たまさ。が「小説家になろう」で書いているオリジナル小説のweb拍手お礼のページ。
--年--月--日 (--) | 編集 |
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2010年06月30日 (水) | 編集 |
「今日はどんなお話?」
 ファティナは午睡の為にリキュールの入ったミルクを舐めながら期待に満ちた眼差しでクレオールを見た。
 クレオールは少し思案した様子だったが、いつものように女主の求めに応じて口を開いた。

「狼と羊の話をしましょうか」
「狼に羊が食べられてしまうの?」
ファティナは怖い話はいやだとその顔でいっている。もちろん、クレオールは主を怖がらせるような話をするつもりはない。
 やんわりと微笑んで話を進めた。

「あるところに性格の悪い狼がいました。狼は狡猾で短気な生き物です。その狼の前には一匹のそれはそれは愛らしい羊が現れました」
 ファティナはマグカップを両手で握りこんだ。
「狼は羊を獲物として定めました。狡猾にずるがしこく羊を囲い込みます」
「食べられてしまうのはいやよ?」
 くすりとクレオールが笑う。
「狼は羊があんまり小さいので大きくしてから食べることにしました」
「まぁ、ひどい」
「狼は羊に暖かな寝床を与え、美味しい料理を与えてゆっくりと自分には害意がないのだと教え込みました――狡賢く羊を騙して、騙して、どうなったと思います?」
「……食べられてしまったの?」
ファティナは眉をひそめた。
「いいえ。狼はやがて羊を食べることができなくなってしまいました。あんまり羊が愛らしくて、今では羊の足元で身を伏せて、他の狼に食べられてしまわないように従順な番犬になってしまったのです」
「まぁ、良かった!」

「良かったですね」

低く流れた第三者の言葉に、クレオールは内心で引きつった。声と同時に慣れた所作で女主の横から退く。
 外套をばさりとクレオールに預けたヴァルファムはその碧玉の眼差しをクレオールに向けた。
「――創作か?」
「はい」
「おまえにそんな才能があるとは知らなかった。狡賢く性格の悪い狼ね?」

 心の狭い狼は獰猛な気配を隠そうともせずに羊の手をすくい上げて帰宅の挨拶を済ませた。



****

クレオールは結構気苦労があるんだろうなぁ……なんて思うのです。
きっと物静かに控えながら心の中では色々と思っているのですよ、うん。
スポンサーサイト

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。