たまさ。が「小説家になろう」で書いているオリジナル小説のweb拍手お礼のページ。
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2010年09月30日 (木) | 編集 |
甘い、甘い匂いが誘いをかけた。
カラメルのふんだんに使われたプリン。チョコレートを混ぜこんだ生クリーム。こんがりと焼けたシナモンと甘い蜜の香りがたっぷりとした焼きりんご。
 空腹だった訳ではない。どちらかといえば腹は満たされていた。だが言うではないか、デザートは別バラ。

甘くてとろけるようなその香りの誘いに意識を集中させ、出所を探って飛び込めば――

 そこは古臭い屋敷の屋根裏部屋。
そしてちまっこい糞餓鬼が、それこそ乳臭い糞餓鬼が、ありえないような材料を使って召喚なんぞをしでかした現場だったという訳だ――

このオレ様を! この偉大なる大悪魔のオレ様を、トマトとほうれん草とジジィの白髪なんぞで!!

ふざけんなっ! ぜってぇ許せねぇっ。

 オレ様は偉大なる大悪魔!
生憎とうかつに召喚なんぞされちまったオレに名前はない。
門をくぐったその時に剥奪されたのだ。

くそったれ!

***

「時間が無いって言ってるじゃないっ」
「遅刻するのはファウリーがもたもたしているからだろうに」
 呆れたように言いながら、お隣のレイシェンはそれでもファウリーの栗毛の髪から手を離さなかった。
「髪なんてほっとけばいいでしょ」
「駄目だよ。女の子なんだからちゃんとしないと」
「もうっ! 切るっ、絶対に切る。首筋まで切ればさっぱ――」
 ばたばたと足をばたつかせながら苛々と叫ぶと、ぐいっとレイシェンはその髪を引っ張った。
「切ったらもっと魔力が減るかもね」
「――」
「ファウリーはそれでなくたって魔力値も少ないし、ぼんくらなんだからさ。昨日も召喚術の時間に大量のワカメを出したんだって?」
「……」
「ま、ミセス・ハーヴィは褒めてるけどね」
ぱっとファウリーの顔に喜びがさした。
「本当?」
「食費が浮くから」
「……」
「キミの海産物シリーズはある意味素晴らしいよ」

ファウリーは唇を尖らせ、ぱしりと自分の髪をいつまでも編みこんでいる男の手を払った。
「レイの馬鹿!」
「まだ編込みが途中だよっ」
「知らない!イーダ!」

 駆け出し、途中で振り返って思い切り歯をむきだしにしたファウリーは、身を翻してそのまま石畳の坂を駆け上っていってしまった。
せっかく丁寧に編みこんだ髪を、走りながら乱暴に解いていくのが見える。
 それを眺めながらブラシについた髪を丁寧に引きぬき、ガラスの器の上で火にかけながらレイシェンは肩をすくめた。
「ほら、髪の毛一本にも意識を向けないファウリーは召喚士だとか魔導師なんて向かないんだから」
「では、何が向くのかね」

窓から二人の様子を眺めていた白髪の混じる初老の男は、やれやれというように声をかけた。
「そりゃ勿論、医療魔法師の嫁でしょ――それは素晴らしい嫁になるよ。なんといっても食費が助かる」
「……ハっ、昔から不仲な癖に」
「仲良しですよ、昔っから仲良しだし大事にしてるじゃないですか」
 レイシェンはけろりといいきり、自分では爽やかだと思っている微笑を浮かべた。
「では、お祖父さま行って来ます。早く行かないとファウリーの髪を直してやる時間がなくなってしまうから」
「まだおまえのジジイになった覚えはない」
「今更ですよ――棺桶に片足突っ込んでるジジィにさっさと曾孫を抱かせてやろうという優しい孫婿を敬いなさいよ」
「だからおまえのジジイになった覚えはないし、本当につくづくおまえはえげつないよな」

 そんな二人のやりとりを更に高い場所から眺めながら、オレはケっと舌を打ち鳴らした。
八つでオレ様を呼び出しやがった小娘は、先日十六になった。学校とやらに通い、自由選択の授業では召喚コースに通ってやがる。
 だが、当然あいつがまっとうに召喚などできる訳はない。
――なんといっても、オレがその召喚門を閉ざしているからだ。それでも親切なオレ様はあいつが召喚をするときにはきちんと手伝ってやっている。

昨日は大量のワカメを出現させてやり、教室中を失笑の嵐にしてやった。

その前には大量のサザエを落としてやったら、教師は目の色を変えていた。今回のワカメは傑作だと思ったが、どうやら教師にはウケなかったらしい。
「せめてコンブならねぇ」とぼやいていた言葉をオレはしっかりと聞き漏らしたりしなかった。役に立つものを呼ぶ気はないね! オレのコレはあくまでも、あくまでも復讐なのだからなっ。

 ファウリー! このちんくしゃの糞餓鬼!

オレは激しく根に持つ性格だ。ざまぁみろっ。
おまえを地獄に叩き落してやる!

レイシェンの嫁だとっ? 馬鹿めっ、おまえを幸せになどしてやるものかっ。どんなささやかな幸せもびしびしと叩き潰してやる。

オレは大悪魔だからな!


***

はい、悪魔バージョン。
ファウリーは悪魔にとりつかれていることに気づいてません。

レイシェンの嫁が果たして幸せかどうかは謎。
プロポーズの言葉は「海産物は大好きだ」だったらどうしよう。

暇つぶしに面白いのですが、召喚は深く考えてないのできっと続かない。
悪魔の名前も考え付かないですし。
あくまでも暇つぶしネタって感じですね~
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